staff higuchi

1796年、ドイツのなめし革業者の家に生まれたミヒャエル・トーネットは、
指し物職人(板を組み合わせて机、たんすなどの器具を作る職人)の修行をした後、23歳で家具職人として工房を設立しました。
1830年、トーネットが34歳の時に曲木の製法を開発し、
成形合板の原型といえる積層材による椅子を発表。
手に入りやすく安価なブナ材を使い、パーツを組み立てることで
大量生産・大量輸送という近代システム構築の先駆者として活躍しました。
トーネットの曲木椅子以降、19世紀後半から20世紀前半にかけて
アールヌーボー、ゼセッション、デ・スティルなどの
芸術、建築の運動がはじまり、数多くの近代様式が生まれました。
良質なものを市民の手に届ける、良い意味での大量生産家具という
ものを生み出したトーネットの椅子は、多くの作品が今なお名作として
世代を超えて大切に使われています。
staff 高村
今回はヘリット・リートフェルトデザインのレッドアンドブルーを紹介します。
幾何学的で単純なこの椅子。目を引くデザインとカラーリングが個性的です。

自ら「美しく空間的なデザインが直線的な材料と機械によって創りだせるという証明」と語るように、この椅子は、幾何学的メカニズムでデザインされており構造上は単純で原理的です。しかし、そこから生みだされた造形に見られる、一つ一つのパーツの交差による独特の空間的ハーモニーと美しいダイナミズムは、実に多彩で複雑な表情をこの椅子に与えているといえます。
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リートフェルトはオランダで家具職人の息子として生誕。11歳から父の工場で働き、1911年に家具職人として独立。 1917から1918年に「レッド&ブルーチェア」をデザインし有名になりました。1923年にはバウハウスに作品を出品。世界大恐慌の時代、単純な形の木を組み合わせて家具を作るスタイルで安いコストの家具をデザインしました。木材を組み合わせただけでできたこの椅子は、今までの椅子に革命を起こしました。それまでの椅子は熟練を重ねた職人が何日もかかって作られた高級な椅子が多い中、このレッドアンドブルーは誰もが簡単に組み立てられる椅子。

詳細な設計図はほとんど不要で、構想からプロトタイプまで8時間程度で作られるものもあったとか。また、「ほぞ」ではなく、構造の自由度の高さから「だぼ継ぎ」による設計を採用したそうです。当初、木そのままの色でデザインされたこの椅子は、画家のモンドリアンに影響されて黒のライン、赤の面、青の面、そして黄色のポイントというように、カラフルに色づけされてこの赤と青の椅子ができあがりました。モンドリアンは平面ですが、それを立体3D化することで、新たな画期的な椅子を見いだしたのです。リートフェルトは建築家としては、シュレーダー邸が有名でもあります。
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staff 濱口
北欧・フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトのスツールを紹介します。artek社より販売されている「60」で、まず名前が「数字のみ」というところからスマートです。artek社はアアルト自身により設立された会社で、その他の製品名称も、
数字もしくはアルファベットで名付けられています。
■artek 60/制作年:1933 サイズ:W350Φ・H440デザインは、まさにシンプルイズザベスト、飾り気のいっさい無い姿をしています。また白木の素材感と脚のラインがいかにも北欧らしいデザインとも言えます。この脚のラインですが、なんとアアルトの特許による「曲木」の技術により製作されており、別名「アアルトレッグ」と呼ぶとのこと。
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「曲木」と聞いてまず思い浮かべたのが「
トーネットの椅子」なのですが、調べてみると、アアルトのこの椅子よりもさらに100年も前に、木を曲げて椅子をつくっていました。とすると、何が特許なのだろうとさらに調べてみると、トーネットが木材を蒸して曲げる「熱間曲げ」に対し、アアルトの場合は「挽き曲げ」、木にノコギリで挽き目を入れて曲げる手法とわかりました。
■挽き曲げこの手法は、熱を入れて材を一度柔らかくする工程を踏まないため、より強度を保てる点が特徴のようです。また「挽き曲げ」のやり方そのものは、元々「そり」の先端部をつくる際に使われたフィンランド伝統の技術とのことで、まさに北欧家具の原点と言えるのではないでしょうか。

スツールとしては、ぜひほしいスタッキング(積み重ね)も可能です(画像奥のようになります。)。また座面のバリエーションや、4本脚、子供用なども用意されています。
ちなみに3本脚より4本脚の方が丈夫だし、安定するだろうと考えがちですが、床面があまり平坦でない場合は3本脚の方が、全ての脚が必ず床に着くため、がたつきが起きにくく安定します。アアルトの椅子が3本脚からスタートしたところからも、日本人とは違う感性、石の床に靴を履いて生活するイメージを感じさせます。
家具制作鯛工房 (家具制作資料室/ベンディング):
http://www.tai-workshop.com/bend/bend-index.html※かなり専門的ですが、「曲木(ベンディング)」の技術について、詳しく解説されています。ここで紹介されている「挽き曲げ」のイラストがアアルトのものと全く違う点が興味深いです。イラストのやり方は、日本でも木の箱(弁当箱など)をつくる際などに使うそうで、突然、日本の伝統技術ともリンクする点がおもしろいです。
artek社HP:
http://www.artek.fi/
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staff 高本
椅子ブログ6回目です。
紙で出来た椅子「ハニーポップ」をご存知ですか?

厚手の紙ではなく、薄いぺらぺらのグラシン紙という紙で出来た椅子です。
椅子なので、当然人が座る事が出来ます。
繊細な為、座った部分が、おしりの形に変形します。
そんな椅子ができるのかと疑ってしまいます。
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デザイン は、au携帯電話・メディアスキンのデザイナーとして話題の
「吉岡徳仁」によるものです。
■ハニーポップ/デザイナー:吉岡 徳仁/制作年:2001 サイズ:W740×D850×H720×SH430mm「ハニカム構造」という蜂の巣と同じ構造をしており、
薄い膜でも力が分散され、人の体重を支えられる
そうです。
また、圧縮されたコンパクトな状態で売られ、
横に引き伸ばして初めて椅子の形になります。
透き通るような美しさも併せ持ち、
使う人に驚きを与えます。
デザインのエキスがつまった椅子です。
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staff 藤田
「椅子」ブログ5回目、
私が選んだ椅子は長大作デザインによる低座椅子です。
長さんが板倉順三建築事務所に勤務されていた頃、ある歌舞伎役者に老齢の母親がくつろげるような椅子をと依頼され、この椅子が生まれました。

□低座椅子/製作年:1960年 サイズ:H65・W55・D68.3・SH29特徴的な背もたれ部分の曲線は柿を切ったとき、断面に表れる力強い曲線に魅かれ、そのイメージに近づけようとしたそうです。
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家具製作の際は1/1で図面を描き、幾重にも重ねた線の中から1番良い線を選ぶと言われているので、この曲線になるまでには相当な数の線が引いては消されていったのでしょう。
また、合板によるレールのようなフレームは力を分散し、畳を傷付けないように、座面高さ290mmというのは立ち上がるときに苦痛を感じず、座ったときにも長時間快適にとに考えられています。
椅子に座ると目線が低く、また足が伸ばせるので、ゆったり落ち着いた気分になります。ソファを背もたれにして、テーブルとソファの間に座る感覚にちょっと似ているのかもしれません。
和室はもちろん、リビングやロフトに置いても、床に座る/普通の椅子に座るときとは、また違う感覚が味わえると思います。
2年ほど前、世田谷美術館で展示が行われていたので、見に行ったのですが、長さん御自身もいらっしゃいました。Tシャツ姿でにこにこと、子供たちに椅子の説明をされている姿が印象的で、低座椅子から感じる温かい雰囲気と同じものを感じました。
85歳の現在でも精力的に活動されていて、絶えず自身の作品の改良を考えているとのことです。
作品である椅子にも、作者の仕事の姿勢にも魅かれます。
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staff丸山
Ercol スタッキングチェア 製作年:1957年 サイズ:ssからLLまでイギリスのアーコール社で1957年にデザインされた「スタッキングチェア」です。アーコール社は、イタリアに生まれ20世紀初頭にイギリスに移住した家具デザイナー、ルシアン・アーコラーニによって1920年に設立されました。
この「スタッキングチェア」は蒸気による曲げ木技術で生み出されたニレ材とブナ材の木製チェアです。伝統的な製法とモダンなデザインが融合されているシンプルですっきりとしたデザインのこの椅子は戦後に建てられたイギリスの小さな家やモダンなインテリアの住宅にも難なくフィットしたそうです。名前の通り、垂直に積み重ねられるようデザインされていて、子供用のサイズはイギリスの小学校などで使われていました。
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近年ではマーガレット・ハウエルが復刻したことでも知られていて、その時のエキシビジョンでは何脚も重ねてディスプレイされていたようです。こんなにたくさん重ねても重さを感じさせない華奢なデザインですが、非常に丈夫で座り心地もとても良いそうです。
シンプルですが部屋にひとつあるだけでも存在感がありそうで、座るだけでなく鉢植えなどを置いて飾っておくのもいいかな、と想像がふくらんでしまいます。どちらのサイズもかわいらしくて、いつか自分の部屋にもおきたいなと思っています。
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staff 神出
ノルウェーにあるストッケという家具メーカーが発売した木製の椅子です。北欧の豊かな自然は独自のデザイン文化を生み、また健康を考えた人間工学の視点から医師や専門家の協力を得てデザインされており、子供が足を置くための丈夫な足のせ板や座面の板が10段階以上も設定ができ、大人になっても充分に使えます。
デザインはとてもシンプルで座り心地は木のぬくもり奥行きのある座面が安定感をもたらし、長時間座っていても疲れない椅子になっています。

>■トリップトラップ/制作年:1972 サイズ:W457・D492・H785
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身近な家具が自分の幼い時からずっと使えるというのはとても幸せな事だと思います。
私は親の仕事上転勤が多かったため一つの家にずっと住むことによって生まれる家への愛着が正直ありませんでした。しかし自分が幼い頃から使っている椅子があるとなんだかホッとします。
段階を変える時はちょっとしたイベントになり自分も成長したのが実感できるのが楽しくて早く大きくなりたいと願ったものです。
そんな思い出が詰まった椅子に座ることが実家に帰ってきた証でもあるのです。
皆さんにとって実家と言ったら家を思い浮かべるかもしれませんが家に愛着の薄い私にとってはその椅子こそが実家なのです。
ストッケ社
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staff たか
広島の木工家具メーカー「マルニ」よりこの春発表されたのが、深澤直人デザインによる『HIROSHIMA(ヒロシマ)』。
制作にあたってはハンス・ウェグナーの「Yチェア」に並ぶ定番つくることを目指したそうですが、「Yチェア」と写真のアームチェア、両者には共通して、動物の骨格や樹木の枝を思わせるようなフォルムを感じます。
■HIROSHIMA アームチェア/制作年:2008 サイズ:W566・D530・H765・SH420
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実際に木製イスは、プラスチックや金属製のイスと違い、座った時の力のかかり方が正直に形に反映されるので、材と材の組み合わさる部分には膨らみを持ち、それ以外の部分は自然と細くなっていき、シンプルながらも無駄のない形に集約されていく傾向があるようです。
先日ショールームで実際に座ってみた際も、見た目こそ華奢な印象でしたが、座ってみると体に吸い付くような安定感があり驚きました。説明によると、最終形に至るまでは、深澤さんとマルニの職人さんとでミリ単位の緻密な変更を何度も重ねたのだそうです。
座り心地はもちろんのこと、表面の手触りや光の陰影に至るまで、深澤さんのデザインへのこだわりを感じられるこのイス。その一方で、職人さんの高い技術力が無ければ完成しなかったのでしょうね。
「カッコイイ」と思うイスは、インテリアショップに行けばたくさんありますが、このイスは実際に自分が「使いたい」と思えるイスのひとつです。
マルニMARUNI COLLECTION 2008 BY NAOTO FUKASAWA*ゼロワンでは、マルニの代理店をしています。HIROSHIMAの他、nextmaruniなどをご希望の方はzero-one@01-office.co.jpまでお問合せください。
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