素材をつかいこなす! [01スタッフより]

staff 濱口

フローリングやタイル、珪藻土などの左官材、それにメラミン化粧板(キッチンの扉などで使われます)等々、インテリアの仕上げに様々な選択肢があるように、建物の外側の仕上げにも、実にたくさんの種類があります。吉祥寺のtradicaは特に多くの仕上げを盛り込んだ計画、今回はそのあたりを少しご紹介したいと思います。

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これは共用スペースから建物側を見た写真。各住戸への階段が折り重なる複雑な平面が、個々の部分毎にディテールと素材を切り替えながら、組み上がっているところがよく分かるアングルかと思います。たしかに仕上げの数も多そうです。
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同じ画像に文字で仕上げを書き込んでみました。

・RC(鉄筋コンクリート)打放し
・RC本実型枠
・RC小叩き

これら3つは、構造体であるコンクリート面をそれぞれ違う表情で切り替えています。打放し仕上だけでも手間がかかる上に、さらに拘った仕様を使い分けています。

・錆塗装(しぶい赤)
・溶融亜鉛めっき(にぶいシルバー)
・溶融亜鉛めっき、リン酸処理(ダークグレー)
・アルミ電解着色(つや消しのダークブラウン)

上記3つはスチール、鉄の仕上げ方のバリエーションです。鉄の弱点はサビですが、それに対処するためのメッキと逆転の発想で最初からサビさせちゃうという方法。それからサッシはアルミですが、全体のバランスを考え、つや消しの加工を施した製品を採用しています。

・ウッドチップ舗装
・再生木ルーバー
・木突板

木材系の素材です。コンクリートと鉄、それにガラスで構成された建築に住宅らしい暖かみを付加します。
最後にポイントになるのが「植裁」です。もともとのお庭にあった松の大木と梅の木を残した上、ふんだんに多種多様な植物を植え込みました。


他のアングルも見てみましょう。

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共用スペースからエントランス方向を見たアングル。
境界塀はメッシュボックスにゴロゴロした石を入れたもの。


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エントランスを反対側から。松の大木のすぐ脇を毎日通ることを意識して計画しています。門扉は前述の「リン酸処理」。松の風格に負けないように味を出しています。


何かのバランスをとる時、その要素が少ないほど簡単です。インテリアも外観も同じで、シンプルに要素を減らしていく方がまとめやすく間違いがありません。これに対して吉祥寺tradicaは逆をいっています。設計事務所として難易度の高いものに挑戦してみた、それは確かにそうかもしれません。しかし、やはりそこに価値を見出したから挑戦したのです。

tradicaは共用部に階段の多い建物です。錯綜しているといっても良いくらい。であれば、やはりシンプルにまとめた方がスッキリするのではないかと考えるのが普通でしょう。しかし実際は全体の印象がアッサリする分、階段の存在が象徴的になり目立ってきてしまいます。シンボルとなる松の木を中心として、お庭を通るようなアプローチをつくりたいのに、シンプルだけど大きな建物の方が主張しすぎてしまうのです。プランニングに加えて、仕上げを変えていくことで、程よい「分節」をつくっています。

また植裁を中心に生まれた豊かな外部空間に「シンプルさ」だけで勝とうとするのは、また難易度の高い試みでしょう。バランスをとるためには例えば植裁計画の方をもっと整頓しキッチリしたものにしていく必要があります(それはそれでカッコイイんですが。)。また仕上げを多用するといっても、ペンキで色を塗り分けるような方法では、だいたいにおいてうるさくなるだけです。今回採用した仕上げはどれも「素材感」があるという点で共通しています。これがなんとなく全体に「馴染む」ためのポイントではないかと考えます。また新築らしからぬ、味わいも出るのではないかと思います。


尚、冒頭の画像のように建物を正面に見据える視点は日常ではあまりないはずです。実際は2枚目の画像のように行き帰りの移動する方向に対し、視野の脇に分節された素材たちが見え隠れするかたちになります。そのことも考慮して、少し雑多なくらいの構成にしています。


それから今回あえて植物も仕上材の一種のように表現しましたが、植物は生長しいずれ枯れますし、日々の管理も必要で、やはり全く違うものである事は、当たり前ながらも最後に付記しておきます。建築の様相に変化を日々与え続けてくれるとともに、入居者の方々がコミットする場を与えてくれる要素としても大変に重要で、ゼロワンオフィスでも、植裁計画は常に大事にしている部分です。

色や形だけでは表現しきれないもの、今回で言えば「素材感」といったところを見落とさずに設計したいものですね。


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