漱石 [01スタッフより]

staff 松尾

皆さんは余暇をどのように過ごされますか?
私は読書をして過ごすのが好きで、中でも小説を読んでいる時間は至福のひとときです。

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小説を読む、という作業は、映像や音などの情報が既に与えられている映画、テレビなどとは異なり、活字を通して物語に関わる時間、空間、五感等に関わるものを読者が自ら作り出すことを要求しますが、そういったより能動的な作業に脳がより気持ちいいと感じる、とすれば、それはなかなか悪くないことだな、と思います。

小説家の中では特に夏目漱石が好きです。誰もが知っている作家ですがその紹介を少し。
夏目漱石は「余裕派」と言われる通り、世界の捉え方がどこか超然としていて、彼の小説では漱石自身が雲の上からその物語をフェアに眺めているような切り口で語られ、そういった視点が好きです。

漱石の作品の中でも「三四郎」、「坊ちゃん」は、なかなか面白い、という程度なのですが、「それから」、「彼岸過迄」、「後人」は衝撃的な面白さです。

「それから」を読む少し前、私は個人的にややきつい経験をし、それにただ打ちのめされ、自分自身のそういった状態をうまく分析できずにいたのですが、その経験の根幹にあった人間の性について漱石は「それから」の後半部分で「自然」と「義侠心」というキーワードを使って取り扱っており、自分を整理するのにとても役立ちました。
また、私より100年以上前に生まれた人間が小説の中で自分を救ってくれたことにも驚きました。

「彼岸過迄」、「後人」ではともに、家族や女性、社会との関わり方に苦悩する知識人(彼岸過迄:市蔵、行人:一郎)が描かれています。
それぞれの作品に登場する彼ら以外の明るい(?)性質の登場人物たちは、社会の考え方に自ら乗り移っていき、「茶の湯をやれば静かな心持になり、骨董を捻くれば寂びた心持になる」のですが、彼ら知識人は対象に夢中になるよりも先に、対象や社会を考える種に使い、その結果、周りからは非難され、煙たがられます。
多分、体育会系のノリや流行に踊らされる人間に対して冷めた目を持たれていらっしゃる方には面白いと思ってもらえるのではないかと思います。

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