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建築家コラム vol.10/「谷口吉生」 [建築家コラム]

staff..戸田真..
谷口吉生(たにぐちよしお:1937~)

東京生まれ。慶応義塾大学工学部卒業、ハーヴァード大学建築学科卒業、建築学修士。
丹下健三・都市・建築設計研究所を経て、谷口建築設計研究所設立。父は建築家の谷口吉郎。

美術館、記念館、博物館等の建築で名声を浴び、数々の賞を受賞。
日本建築学会賞には2度も輝いている。(1979、2001年)
代表作には資生堂アートハウス土門拳記念館東京都葛西臨海水族園
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館東京国立博物館法隆寺宝物館などがあり、
そして、昨年11月にリニューアル・オープンを迎えたニューヨーク近代美術館(MoMA)の増改築の設計者として、いま世界中でもっとも注目を集めている建築家であると言えるでしょう。

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<東京国立博物館法隆寺宝物館>

そんな谷口建築の特徴は、やはり直線的な箱型の建物、緻密に計算された光と影、建物周囲に配された水や緑との艶やかな調和ではないでしょうか。
そして何を躊躇う事もなく堂々と聳え立ち、
いかにそこに『在る』かを定義付けるその表情。
それら完成後の事項に関しては、以前もコメントとして多少触れているので、
今回は少し違った形で谷口建築にやわらかく触れてみたいと思います。
・・・それに至る経緯の部分を含めて・・・

谷口吉生氏の拘りは勿論『その形態』にも現れているし、
成るべくして『その形態』になっていると思う。
しかし実は最前線で意識するところ、それは『その思想』であるということ。
谷口吉生氏の口からもそのような発言を耳にした方もいるかもしれません。
一見、谷口建築は『その形態』が凄すぎるあまり、外見が先立って目立つ傾向にある。
しかしながら谷口吉生氏の重んずる前提にあるものは、『敷地』というものに対する建築の思想である。
『その思想』は常に異なり、自身常に独創的で独自のものを望んでおり、
・・・結果、『その形態』になるだけであると。
様々な素晴らしい調和を形態として生み出してきた谷口建築の中には思想の調和も随所に含まれているのだと思う。
言い換えれば、思想の調和が成り立っているからこそ、形態として現れるのだと。また独創的という部分においても同様だと。

---谷口建築の、私自身への影響として---

まず率直に、谷口建築が好きです。
何故か?
最初は正直見た目ですね。
恋愛と似ているような気がします。
建築も一般的解釈を得ようとした時、取っ掛かりは見た目なのかな?と。
ただ、その中身を知れば知るほど魅力が出てきたり、そうでなかったり。。

谷口建築との最初の出会いは葛西臨海水族園です。
幼い頃、親に連れていってもらった時です。
その時は建築も谷口吉生氏も全く知らないですけどね。
ただ凄く印象には残っていますね。建物としても。
ドーム型をしているので、年齢を問わず分かり易かったのだと思います。
大学生になり、隣の展望レストハウス棟に行った時は衝撃でした。
駅からの一本道の正面にガラスの箱が見え、透けて空や海が見えるそんな光景にただ圧倒され、凄いという気持ちでいっぱいでした。
季節を経て、昼間建物目的で行った時、夜中車で通りかかり友達と行った時、
観覧車目的でデートで行った時など何度も様々な形で触れていく度にその魅力は増していきました。
ガラスとスチールのとてもシンプルな構造の建築で、内部にはゆったりとしたスロープがあり、そこからも全ての風景を楽しむ「場」として認識し易いことでしょう。
しかし、表面のガラスとの関係性も考慮しつつ、様々な角度、視点から捉えてみると、単に眺望目的だけではない環境との調和をその建築全体に感じることができます。
そんなところから私のガラスに対する興味は生まれていったのだと。

長野県信濃美術館東山魁夷館も好きです。
私が東山魁夷画伯を好きになったきっかけもこの場所のおかげです。
ただでさえ素晴らしいと感じる画伯の絵がより一層引き立って見えるのです。
内部は直線的な壁を基本的に用い簡潔に構成されていますが、
水辺付近のジグザグな廊下は『雁行』と呼ばれる日本の伝統美を表現しています。
谷口建築はモダンな空間表現の中に意外と日本の伝統美が多く含まれていることを感じます。

そして私の最も好む谷口建築は法隆寺宝物館です。
水辺に浮かぶような堂々たるそのフレームの中に入っていく感触はとても魅力的であり、それを支える細い柱も洗練されていると思います。
思想をそのまま形態に実現させるそのディテールにはいつも驚かされるばかりです。
私の家からもとても近いこともあり、足を運ぶことも少なくはありません。

谷口建築は私的にはとても身近な存在でありながら、
とても遠い存在という位置付けをしています。
敢えて建築としてのみ影響を受けてきただけでなく、日々の生活の中でも影響を受けてきた谷口建築をこれからも注目し、また何か影響を受けたいと思います。
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