ものさし [建築家のオフタイム]
モノの大きさを測るとき、自分の背丈と比べたり、手のひらと比べたりは、誰でも普通によくやる。「背丈ほどある」「広げた手のひらより大きい」「握りこぶし大」・・などなどそれもそのはず、昔からスケールは「身体尺」から始まった。つまり身体を基準にモノを測ることが日本でも欧米でも普通だった。

欧米で使われている単位、インチは手の指、フィートはfootの複数形つまり足から来ている尺度。
一方、日本や中国の尺も親指と人差し指を広げた長さが大元で、その象形が文字となり尺という形の字になったといわれる。
身体が基準の場合、もちろん個人差もあるし時代によっても、場所によっても異なっていた。加えて、その時々に様々な思惑や都合によって何種類もの単位の尺ができたため、明治度量衡法で整理された歴史がある。
今でも、中国の尺:33.3cmと日本の尺:30.3cmと微妙に異なるのだが、その経緯は、尺貫法の単位をメートル法に基づいた定義に改めた時に、日本ではそれまでの値にできるだけ近づけようとして換算が複雑になっているのに対し、中国では2分の1、3分の1など単純な換算になるようにした為ことによるらしい。
国際的にも、1875年、「時代や国を問わず使えるように」という趣旨で、度量衡の単位を統一を目指したメートル条約が世界各国間で締結された。
このメートルは身体ではなく地球の大きさから割り出した単位、きわめて科学的な寸法が基本のスケールになっている。
条約が結ばれたとは言え、百数十年を経た今でも、なかなか昔からの単位から抜け出せずにいるところも多い。
身近なところでは、建築でよく使われるJIS規格が、いまだに尺貫法ベースのため、木造住宅は1.8mモジュールが基本だ。
本来、日本人の体型から作られた単位であったが、日本人の体も大きくなってきて、皮肉なことに?地球の大きさから割り出したメートルモジュールのほうが、今の体型に合ってきている。
英語から来たと思われているメートル法、漢字では「米」とも書くが、実はこのメートル法の元祖はフランスである。
日本では建築など一部に残るまでになったが、ご存知のようにイギリスもアメリカはなかなか、メートル法に切り替えられずにいるようだ。マイル、ヤード、インチ・・・・
個人的には、もはや身体尺よりメートル法のほうが大きさを正確にイメージしやすいが、身近なちょっとした時には、やはり自分の体を基準にする個人身体尺を用いるものですね。