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コラム「住まい考察」#01.結露と外断熱について(1) [コラム(blog版)]

~結露の原因は内断熱?~

日本の住宅は結露が多くて困る。さらに建物内に発生するダニやカビが、喘息やアトピー性皮膚炎等の原因といわれ続けている。健康や環境問題の研究者からは、建物の断熱工法に大きな問題があると叩かれて久しい。にもかかわらず問題が一向に収束されないのは、解決の難しさと共に建築に携わる者の姿勢に起因しているのだろうか。今回はその糸口を掴むためにも、結露と断熱材の関係を調べることにした。 ◆ 結露って?
結露は、日本の住居ではほぼ確実に体験できる現象ともいえる。結露が目に見える形ではっきりと分かるのは、室内側の窓や壁に水滴が付着する状態で現れる表面結露である。一方壁の内側や床下、天井の上といった目に見えない部分で発生するものがあり、これを内部結露、あるいは壁内結露という。暖かい室内から壁内に浸入した水蒸気が断熱材の中に入り、冷えた断熱材の中で結露する現象である。これは建材を湿らせたり腐らせたりするばかりか、カビも発生させるため建物の寿命を短くしているといわれる。窓ガラスの表面結露の場合は、二重(ペア)ガラスやトリプルガラスにすれば防げるが、内部結露は単純には解決しない。防止策の第一歩としては不必要な水蒸気を壁内に浸入させないことである。が、実際それができればコンクリートマンション居住者の多くが頭を抱えなくて済むのが今の現実なのだ。四季の変化に富み、多湿な日本の風土において、常にお付き合いを余儀なくされる難題だ。

◆ 断熱材って?
断熱材とは熱を断つための材料であり、省エネルギーと快適性との二つを追求するために生まれたもので、この断熱材を構造体の内側(室内側)に貼り付けた工法を内断熱と呼ぶ。これに対して室外側に取り付けた工法を外断熱と呼び、環境先進国のドイツ、北欧、北米などでは特殊な文化施設などを除いて新築のコンクリート建築物のほとんどすべてが外断熱となっている。

断熱材を外か内にするかというのは、熱の面だけでなく、水蒸気理論にその特徴が現れる。水蒸気は水蒸気圧の高い方から低い方へ移動するため、内断熱では断熱材にもぐりこんだ水蒸気が外の冷気にさらされたコンクリート壁の温度で冷やされ、壁内や断熱材の中で結露を起こすことになる。外断熱では、室内側の表面温度が部屋の温度と同調しているため、水蒸気が外へ出て行こうとした時でもコンクリートの表面で露点には届かない。つまり結露を防ぐのに、効果のみを考えるならば、内か外かどちらが良いかは明らかなことだ。

実際に現在使用されている断熱材はどういうものがあるのだろうか?
繊維質のグラスウール、ロックウールなどと、発泡プラスチック系のウレタンフォームなど。繊維質のものは吸湿すると性能が激減するので、湿気の多い場所には発泡プラスチック系の方が一般的に適する。また結露対策として、空気層やポリエチレンフィルムなどの防湿層を設けている。代表的な断熱材としては、熱を伝えにくい順に、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、ポリスチレンフォーム、ロックウール、グラスウール、インシュレーションボードとなる。ポリウレタンは工事の際にフロンガスを使用するということで、環境問題の研究者などからは地球環境への負荷として叩かれはじめている。

しかし最近では、発砲ガスとしてフロンを用いない水発泡等の技術開発も進められて、環境保護の点から注目されている。いずれにせよ、建築行為自体が環境という面からだけみれば多大な負荷となるわけで、その中でいかに資源やエネルギー消費を建築物が解体されるまでの長いサイクルで考えられるかが大切だ。ちなみに断熱材そのものの価格は、繊維系のグラスウールに比べスチレンフォームは2.5~3倍高い。

図(材料と断熱の関係)
※ホームページをご参照ください。


◆ 外断熱を考えてみよう
では、外断熱を行う際の断熱材はいったい何が適しているのか?
湿気の点からすれば、上記のように発泡系のものが良いと考えられる。
が、しかし単純に考えてスタイロフォームのようなかたまりで隙間なく防ぐことができるだろうか?いくら性能の優れたダウンジャケットを着てもお腹を出していては効果は期待できないように、一部でも隙間があれば見事にそこの部分だけが結露してカビの発生する実例は数多くある。

では、繊維系はどうだろうか?一部の外断熱推進派は繊維系外断熱を提唱している。外断熱を考える場合、ポイントは、外部でありながら完全に湿気をシャットダウンできるか?である。でなければ肝心の断熱効果が期待できない訳だ。答えは残念なことだが、現実的には湿気を完全に避ける事は不可能だ。だから、断熱材の外側に空気層を設け、湿気を逃がすのだと言う。悪循環なことに、その空気層が今度は湿気を呼び込んでも来る。

加えて、共通して言えるのは外装の仕上の問題。コンクリートとは一旦縁が切れてしまう為に、重たい材料はそれなりの下地が必要になる。タイルや石を貼るためにはPC板と言うコンクリートの壁などを、更に金物を使って2重の外壁を作る必要が出てくる。もしくは、金属系のパネルか、木造用の外装材・サイディングのようなもので、かなり選択範囲は限られてしまう。

我々建築の専門家の間では止水ラインという考え方がある。何処で水を止めるかと言うことである。コンクリート構造であれば、外壁のコンクリートがそれに当る。タイルや石の裏には水は廻るものと考えているのだ。木造の場合は外壁に張り巡らす防水紙、アスファルトルーフィングなどが止水ラインに当る。これも決してサイディング部分ではなく、その裏には水が廻る前提なのだ。金属であろうが、窯業系のものであろうが同じ事。そのため、外断熱の場合、断熱材に水分が到達しない為には金属パネルなどごく限られた材料しかないということになる。この仕上は一般的に集合住宅系で好まれる質感でない上に、タイル貼りよりもコストもかかるものとなっている。

◆ 内断熱はそんなに悪者なの?
そもそも高断熱、高気密のムーブメントがあるが、これは人工的な冷暖房の利用を前提としていることを頭に入れておきたい。都市部のヒートアイランド現象、理屈上の性能どれをとっても、外断熱が優れているのは、誰もが認めるところだ。しかし、風土気候上、または法規上(消防法、採光等)、開口部を大きくとる必要があり、しかも凹凸の多い日本の建築物の場合、結露防止に効果的とされる外断熱は施工上非常に難しくなってくる。仮に外断熱を施したとしても、つぎはぎだらけの断熱層の隙間から、容赦なく外気は進入してくる。さらに外壁の仕上げ材料によっては劣化が早く、維持管理にも手間とお金がかかってくる。雨の多いわが国で、湿気を最大の弱点とする断熱材を躯体の外にめぐらすとなると、薄い防水層のみで、はたしてどこまで水分を切れるのか、どこまで断熱性能を発揮・維持できるだろうか。風土、気候、費用対効果など総合的に考えると、今の時点ではまだ、内断熱に軍配があると考える。

梅雨もなく、氷点下が当り前の北欧や北米、日本でも北海道ともなれば話は全く別であるが、少なくとも東京、大阪などでは内断熱が順当であろう。今の内断熱の主流は現場発泡ウレタンの吹付けである。これは、ムースような物と思っていただければ理解し易いと思うが、サッシュが取り付けられた後に現場で吹付けるもので、コンクリートとサッシュ廻りなどそれこそ隙間なく、すっぽりと覆えるメリットがある。隙間があればそこの部分だけカビが生える話をしたが、その事例は内断熱のケース。つまりきちんと断熱性能が施されている部分は、内断熱でも効果を発揮しているということだ。では、これを外断熱材として使用する可能性もあるのではないだろうか。“すき間なく”という辺りに、今後の外断熱実例化へのヒントが隠されているような気がする。

現在は、さまざまな分野で環境問題が叫ばれており、建物の耐久性や施工に対するスタンスも広がってきている。外装メーカーやゼネコンでは少しづつではあるが、外断熱用の外装材や構法を開発している。公団施工の分譲集合住宅、また住民主体のエコ住宅なども建設されている。これらを引き続き更新できるかどうかが、日本での外断熱定着の先行きを決めるだろう。開口部や凹凸の多い建物の場合、設備や換気の取替えなどが困難であるし、改修するという概念が薄い日本では、これからの設計者なり技術者による受け皿の大きさが問われている。現状を叩き上げて非難するのでなく、進行中の建築物に対して次世代を考えた計画を、準じて行う積み重ねをしていかなければならない。

さて、現在ゼロワンが計画する創作住居では、安定した実績がある屋根部分と地下ピット部分床に外断熱を施す予定である。外壁についてはまだ実験段階と言わざるを得ない。費用対効果の点から、今は本採用にはいたっていない。この続きはまた次回ということにしよう。

【参考文献】
「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」赤池学他著
「日経ECO21」2000.1号 日経ホーム出版社、その他外装材メーカーカタログ参照
「内外装材チェックリスト」2000年度版 建築文化臨時増刊号 彰国社

代表取締役 伊藤 正

つづきを読む
 #02.結露と外断熱について(2)


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  1. 2007/04/18(水) 20:40:04 |
  2. 建築物が気になったぞ

発泡系のレス

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  1. 2007/08/12(日) 23:02:41 |
  2. ドイツの思い入れ