巨匠が目指したもの、それを目指すもの-ライト [建築家のオフタイム]
Frank Lloyd Wright (フランク・ロイド・ライト:1867~1959)近代建築の3大巨匠の一人にあげられることも多いが、実はライトは近代建築を強く否定した。そのライトが提唱したものは「有機的建築論」
1-自然環境との調和。建築は大地から生えているように見えるべき
2-自然に則し、住むのに適した色彩計画
3-材料固有の性質を活かすこと
4-古くなるにつれて、ますます価値が増すようなデザイン
5-建築家の個性の表現が必要

■落水荘 1935年。ピッツバーグ郊外にある百貨店オーナーの週末住宅
コルビジェやミースとは正反対とも言える提言である。「建築は生活だ」「機能は形態に従う」等モダニズムのスローガンと正反対のことを言い、生涯を通じて、自然との調和や教えを説いた。
これほどの作品群を残し、建築家の個性の表現が重要であると、建築を目指すものにとって魅力的な考えにもかかわらず、現在の設計事務所において、ライトの精神や遺産を継いだ作品を作るところはさほど多くない。それよりもむしろハウジングメーカーがライトを目指していると言える。いや、目指すと言うよりはイメージキャラクターとして利用していると言ったほうが正確かもしれない。
外観の形やイメージを模倣することを悪いとは言わないが、ライトの言わんとしていた真髄を目指して欲しいものだ。当時は自然をテーマにしたことで、やや異端の扱いを受けた感はあるが、今の時代、仕上げや材料、経年変化に対する考えはライトの考え方に共感を覚える人が大半ではなかろうか。
ライトの派手な生活などで反感を感じている人も多かったそうだが、合衆国の国民全体の住環境の向上を目指して、誰でもが手に入れられるローコスト住宅の提案と実践にも力を入れるなど、地道な活動もしていた。共同作業を好んだコルビジェとは反対にライトは単独作業を好み、スケッチからディテールの詰め、家具からタペストリーのデザインまで自身で行ったと言う。
終着点はアリゾナの砂漠の中にタリアセンと言う理想郷をつくり、多くのスタッフたちと自給自足の生活だ。世界中から集まる建築学生の為の建築学校を営むなど教育にも力を注いだ。現在ではタリアセン卒業者は大学卒業の扱いである。