建築家コラム vol.05 /「ガウディのデザイン手法」 [建築家コラム]
スタッフ みやけAntoni Gaudi(アントニ・ガウディ:1852~1926)
ガウディ建築は曲線を多用した有機的デザインに見えます。
一見、複雑に見えるそのデザインは大まかに2つに分けることができると考えます。
1)力学的構造に基づく曲線
2)有機的ディテール、装飾

サグラダファミリア受難のファサード 1)の力学的構造とは、双曲線や放物線の構造とも言い換えられます。
ガウディは、力学的構造を実現する手段として逆さ吊り実験を考案しました。
逆さ吊り実験とは、建築を上下逆にしておもりを付けた垂れ下がるひもを用いて重力に逆らわない最も自然な形状を探す手法です。
この方法の典型的な使用例が、サグラダファミリアや、コロニア・グエル教会などです。

コロニア・グエル教会の逆さ吊り実験
2)の有機的ディテールとは主に装飾のことで、ガウディの感性や、カタルニアの風土、文化が色濃い部分です。
これらの2種類のデザイン手法は、異なるアプローチを持つものですが、ガウディは、この2つをお互いに融合させた状態を理想の建築と考えていたのだと、私は考えています。
この2つの密接度・両者のバランスレベルは作品によって様々ですが、一般に晩年の作品になるほど 1)の力学的構造が強くなり、有機的ディテールとの密接度も高まっていったように思えます。
私は、そういう観点から、サグラダファミリアや、コロニア・グエル教会などが好きですが、この2つの建築は、どちらも逆さ吊り実験を用いながらも、有機的ディテールとの関係はかなり異なります。
サグラダファミリアは、天にそびえる力学的フォルムを持つ骨格に、彫刻などの装飾やディテールを用い、宗教的な物語性を建築と一体化させ、理論的に自己完結を目指しています。
コロニア・グエル教会も、同じ逆さ吊り実験による力学的なフォルムですが、その装飾やディテールの手法は、石やレンガなど使用する建築材料の特性や、質感を最大限生かすことを主としていると言ったように、似たような有機的に見えるディテールとは言え、その持つ意味合いや手法はまったく異なっています。
どちらかというと、現代人の私にとっては、コロニア・グエル教会の手法の方が身近なデザイン手法です。しかしサグラダファミリアのような、徹底的に洗練した構造の美しさと、独自の体系を持った装飾の高度な融合は、ひとつの建築の到達点として、理想の姿だと考えます。
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