建築家コラム vol.02 / 「リートフェルト」 [建築家コラム]
staff 石村Gerrit Thomas Rietveld (ヘリット・トーマス・リートフェルト 1888-1964)
オランダのモダン・アート・デザイン運動「デ・スティル」の中心メンバーの一人としても知られているリートフェルト。デ・スティルは美術運動のようなものですが、簡単に言えば様式で、長方形の板、角棒、場合によっては直方体などを3次元のグリッド上に、複雑に組みあわせた立体の面をさらに原色で塗り分けた、重力を感じさせないような構成、若しくはモンドリアンに代表されるような面や線で構成する抽象的な平面のこと。

■シュローダー邸 ユトレヒト/オランダ 1923-24 この様式の唯一の建築とも言えるシュローダー邸は、縮尺模型と原寸のプロトタイプによってアイディアを展開するのが常だった。この設計プロセスでは、3枚のスケッチと2つの模型が作られたのみで行なわれた。
驚くことに、実際の建設工事の際もリートフェルトが用意したのはガラスと厚紙製の大きな模型と、何枚かの実施図面、立面のスケッチのみであった。デザインの大部分は敷地で発想され、リートフェルトの指示に従って作られていった。
シュローダーがこの家に移ってきたとき、まだ室内の壁の塗装には手がつけられていなかった。施主がスイスでの短い休暇をすごしているあいだに、この複雑な色彩計画を考え出し、実施していった。
この住宅はデ・スティルの特徴そのままに非対称形であり、三次元構成、水平、垂直の面と、互いに垂直あるいは平行するいくつかの線形要素で構成されている。これらの構造的部材は、視覚的には独立しているが、その独立感は面や線をそれらの接点よりのばすことによってつくりだした。いくつかの交点では、異なる面と面のあいだに空白が暗示されている。一方を少し高くし、一方を少し幅広くし、個々別の色彩を施している。
この建築(構成)の考え方は80年以上経っている現在もなお、とても新鮮な感覚を覚え、刺激的であり、これからも学びたい所です。(実はプレプロジェクトで、この構成を意識した計画を行なったことがありましたが、土地取得が困難となった為、残念ながら実現することはありませんでした。)
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